伊豆で食べる

アジの開き干し

アジの開き干し - 正しい日本の朝食のために

マアジ-初夏から夏が旬だが、旬に関係なく一年中おいしく食べられる。大アジより中アジ、中アジより小アジと小さいものほど美味。

熱々の御飯にアジの開き、みそ汁というメニューは日本の朝の象徴。塩味がほどよくきいたアジの開きは実にうまい。
干物は魚の水分を蒸発させ、うまみを凝縮・熟成させた保存食だがそのままでは身が厚くて上手に水分が抜けない。
そのため、たいていの場合、開いて干す。
これが「開き干し」と呼ばれるモノで干物=開きとなるくらいポピュラーになっている。
開きづくりは、包丁一本あれば誰にでもできる簡単な作業。特別な道具は何もいらない。
しかもアジは大きさも手頃でおろしやすい魚。
新鮮で活きの良いアジが手に入ったら是非、作ってみて欲しい。スーパーの干物とは全く違う味に驚くこと請け合いだ。

干物作りに適した季節は暑い夏を避けて通年。伊東の場合、九月から翌年の三月くらい。
「太陽で干すのだから日差しが強い方が良いだろう」というのは大間違いで、
気温が高すぎると魚の身がグチャグチャになってしまい締まった良い干物にはならない。
アジの旬は春から夏だが、一年を通じて出回っている。秋口に脂が乗った肉厚のアジで作った手作りの開きは格別だ。
カラリと晴れた日。風通しが良い場所を選んで干す。
特別な道具はいらないが、ハエ対策だけは万全に。
海辺だとハエが浜風を嫌ってくれるが、そうでない場所なら網をかけるか、こまめに見張ろう。

アジの開き干し - 何はともあれ腹開き

魚を開くには大きく分けて二通りの方法がある。魚の背を切って開く「背開き」と腹を切って開く「腹開き」だ。
普段の料理の時、つまりフライや天ぷらを作る時は、
出来上がりの身の両端がしっかり仕上がる背開きを用いるが、干物の場合は腹開きが多い。

干物の世界では、かつて関西(名古屋以西)は背開き、関東は腹開きが伝統だったが
1980年代前半、沼津(静岡県)が全国の干物シェア70〜80%を占めるにいたって
沼津の開き方であった腹開きが全国に広まったという事情がある。
では、ポピュラーな腹開きの方法を開陳。

1) アジの腹を切る。
2) エラ、ハラワタ、ゼイゴを取る。
 エラとハラワタはエラぶたの中に包丁(小出刃が便利)の先を差し込んで回すとスルリと取れる。
 多少手際が悪くても要するにハラワタが取れればOK
3) アジの喉元、カマのつけ根から刃を入れ背骨に沿って腹を切り開く。
 背中まで突き破ってしまわないよう、力加減に注意。
4) 頭を割る。切り離してしまわないよう力加減に注意して「割る」つもりで行う。
5) 腹に血合いが残っていたら包丁でこそげ取り、水または薄い塩水でよく洗う。
 使い古した歯ブラシを利用すると簡単にできる。

アジの開き干し - ワタが取りやすいのは背開き

背開きも腹開きと基本は同じで干物にした場合のでき上がりも、さほど変わりはない。
ただし、背開きの頭割りは腹開きの場合より少々難しく、慣れないと失敗しやすいので注意する。
ハラワタは開いてから取るので傷つける事なく綺麗に取れるという利点がある。
では背開きのやり方を紹介しよう。

1) アジの頭のつけ根(背中側)の背ビレの際から包丁を入れ、
 背中に沿って尾のつけ根まで切り開く。腹側に突き抜けないよう力加減に注意する。
2) エラ、ハラワタ、ゼイゴを取る。
3) 頭を割り残った血合いを取って塩水で洗う。

小田原名産のカマスの干物は頭を残した背開きで、これを「小田原開き」という。
干物を作るとき、魚の頭を割るか割らないか。実際のところ干物の頭は割っても割らなくても食べるさいに関係はない。
観光地土産の干物の頭が割れているのは、カゴに並べて売る関係で頭を割って平たくし並べやすくしているから。
つるして干す場合には頭を残していた方が扱いやすい。自分で干物を作る場合には開き方にこだわる必要はない。
背開きでも腹開きでも、やりやすい方法で開けばよい。
アジ一枚をおろせれば、マグロもカツオもおろせるようになる。干物づくり以外にも役立つから是非、チャレンジしてほしい。

アジの開き干し - 道具いらずのかっちゃばき

漁師が浜でやる魚のさばき方に「かっちゃばき」というやり方がある。
これは小魚を包丁を使わず手でさばき、塩水で洗ってすぐに食べられるようにするやり方。
魚が獲れたその場で、道具なしですぐできてムダも出ない。
手で「かきさばく」が転じて「かっちゃばき」というらしい。
イワシを手開きにする方法はポピュラーだが小アジもこの方法で手軽にさばける。これを応用すれば開きもすぐできる。
では、そのやり方を伝授しよう。

1) エラぶたの中に利き手の親指と人差し指を突っ込んでエラをつかみ出す。
2) 同様にして人差し指を差し込んでハラワタをかき出すと同時に腹をさく。
3) 刺身にしたい場合には皮をむく。
 アジの身と皮の間に指を入れ少し隙間を作ってから皮を持って下向きに引っ張れば簡単にむける。
4) 腹ビレ、背ビレを取る。
 尾の側から引っ張ると簡単に取れる。ここまでやったら、もう水にはつけない事。
5) 中骨の上に指を入れ中骨に沿って指を動かし二枚におろすか開きにする。

干物にするなら骨がついたままでいいが、骨を取りたいなら尾のつけ根あたりでポキンと折り軽く引っ張ると簡単に取れる。
ちなみに取った中骨は味噌汁のダシに最高。毎日魚と顔を突き合わせて暮す漁師の知恵に脱帽である。

アジの開き干し - 塩加減は芯までジワッと

開いたアジは振り塩をするか塩汁に漬けて塩分を加える。塩で味をつけ身を締めて魚肉に弾力を与えるのである。
塩は自然塩、つまり海水の成分により近いものがいい。「赤穂の塩」とか「天日塩」の名前で市販されている。

※伊豆ネット、インターネット商店街では「海の精」という自然海塩を扱っております。

魚が少量なら、いちいち塩水を作らなくても振り塩で十分。
塩が均等にかかるよう、ちょいと高い場所からパラパラと魚の両面に塩を振る。
そして20〜30分おく。
塩の量は好みだが、表面にサラリと雪が積もったくらい、というのが目安。ドカ雪だと塩辛くなってしまう。

魚の量が多い時には塩汁に20〜30分漬ける。この方法だとたくさんの魚に一気に、しかも均一に塩が回る。
塩汁は塩1合(コップ一杯=180cc)に水7.5合(1.35リットル)が基本。
塩を完全に溶かしてから開いたアジを漬ける。この塩分濃度は海水を倍に煮詰めたくらいの濃さ。
だが塩加減は好みだから、一度この配合で作ってみて塩の量を調整するといい。
何度か立て塩(漬けると魚が立ってくるような塩水)をトライするうち、だんだん自分なりの干物の味が決まってくるはず。
ただし、塩が芯まで回っていないと絶対にうまい干物はできない。
脂が乗った魚は塩の回りが遅く、また魚の鮮度によっても微妙に変わってくる。プロはこれをカンで調節しているのである。

アジの開き干し - 太陽と風たっぷりの天日干し

天日干しの干物がうまいのは、
太陽で水分を蒸発させて魚の表面に膜を作り、その中にさかなのうまみを閉じ込めて熟成させているからである。
スーパーなどで市販されている干物は機械の冷風乾燥だが、
この方法だと魚の表面に膜が張らず、全体から水分が抜けるのでうまみが熟成されない。だから味が違う。
干物は絶対に自分で干した方がうまい。
天日干しは風通しのいい日陰に広げて干す。水が切れやすいように傾斜をつけるといい。
身を上にして日を当て、表面が乾いたら時々ひっくり返しながら干す。
日差しが当たるようになったら影を当てる。
洗濯バサミなどではさんでつるして干してもいい。
干物専用の網付きの干し器も売っていて、これは猫もハエも寄せ付けないので便利。

干し加減は魚の表面に軽く膜が張り、指で押してみて指紋がつくくらいになるまでが生干しの目安。
そこから先は急激に乾燥が進むので注意しながら好みの乾き具合まで干す。
だいたいの目安は膜が張って指紋がつくようになってから20分ほど。
表面に膜ができるまで、どれくらいの時間がかかるかについては、その時々の日差しの強さと風の具合で一概にはいえない。
何時間干せばでき上がる。なんて杓子定規的な考えは捨て、時々触ってみるのが一番だ。
ちょいとめんどうかもしれないがこれが逆に作る楽しさだと思えば苦にならないはずである。

アジの開き干し - 風だけでやんわりの一夜干し

天日干しが太陽と風で干すのに対して、夜間、風だけを利用して干すのが一夜干し。
実際のところ、干物は太陽だけでも乾くし風だけでも乾く。
この太陽と風のコンビネーションを調節するのが干物作りの極意なのだが、
風だけでやんわりと乾かして半生に仕上げた一夜干しもオツな味だ。
ただし、風だけだと乾燥がゆっくり進むので、気温が高いと魚は腐ってしまうから、一夜干しは涼しい時に限る。
具体的には外気温が12度以下の時。もちろん、あまり寒すぎると冷凍になって干物にはならないが…。
私の住む伊東でいえば、冬、12月中旬から翌年3月初め頃が作りやすい。
夕方に魚をさばいて塩汁に漬けておき、夜、寝る前にセットして冷たい夜風に当てて干す。
翌朝の朝食にこの一夜干しがのると思うと干す前からもうワクワクしてくる。
一夜干しの干物は鮮魚と同じであまり保存がきかないから、ごく薄塩にして作った翌日には食べきる事。

さらに短時間で作る「半夜干し」という干し方もある。ただしこれは、どちらかというと白身魚のほうが美味。
あまり風がない時は、扇風機の弱風を首振りの状態にして当ててやるといい。
また、塩をした魚をザルにのせて冷蔵庫に入れておくと冷蔵庫の脱水作用で立派な半夜干しになる。
マンション暮らしでも手軽にできるから試してみてはどうだろうか。

アジの開き干し - 干物だってヤケドする

干物は作り方が簡単なだけに、ちょいとした気づかいで出来上がりに格段の差がつく。
放っておいても乾くのだが、けっこうデリケートなのである。
ポイントは干物に人間に対するような気づかいをしてやる事。
干物だって人間と同じように、日に当たりすぎるとヤケドする。身が煮えてグチャグチャになってしまうのだ。
だから、日差しが強くて日陰に入りたいと思う時には干物も日陰に入れてやり、
暑すぎる時には打ち水して涼しくする。人間が暑いときには干物も暑い、と考えてやろう。
干物はしゃべる事はないが、そのときどきの太陽や風の加減で、
日陰を求めているのか?水打ちをして涼しくしてやればいいのか?よくよく見ると語ってくれるのだ。

干物の置き台-木枠を作って釘を打つ。釘を少し浮かせておいてそこに漁網や金網を引っかける 美味しい干物を作るコツは、上手に風を利用する事。
干物は乾かない所から腐ってくるから、
下からも風が当たるよう工夫してみよう。
たとえば、手軽にできる方法として、
目の粗いザルや金網のようなものの上に広げて干すやり方がある。
究極のおすすめは、木の枠に釘を打ち漁網や金網をかけて作る自前の置き台。
プロの干物業者が使っているものと、ほとんど同じ作りだ。
意外に簡単に作れて、しかも干しやすい。
下手に間に合わせの道具を探すより、
これを作ってしまった方が、あとの作業が楽かもしれない。